日本庭園の楽しみ方

日本庭園を楽しむのに一番大切なことは、色々なうんちくはさておきその美しさを感じてもらうことなのは間違いないのですが、絵画と同じで作り手の意図していたことが分かるようになるともっと楽しいと思います。

明治23年画家である本田錦吉郎が記した、図解庭造法によると

**庭園は「風趣」を主眼とする。風趣はもっぱら観察するもので、想像が及ばないところがある。それゆえ、庭地を造営するにあたっては、その景色のよしあしをわきまえ、その後樹石を配置すべき。(略)
庭園の大意は、心眼を楽しませることである。ひとつめには、眺望が佳絶であること。ふたつめには園中を散策するとき、さまざまな絶妙な設計がなされているべき。あるいは、亭があったり、あるいは橋がかかるなど。
これらは、すごぶる人を愉快にしてくれるのだ。(略)
実際に意匠を起こすにあたって第一番目になすことは、庭中の主題を定めることである。守護石、真木の位置がそれである。次に築山の高低・遠近、泉水の広狭・屈曲を考え、さらに樹石・灯篭・垣墻(えんしょう・垣根の事)等の配置を工夫すべし。(略)
石組みは庭の骨格となるため、はじめに定めることを法とするまでである。
庭中の位置と地形が定まった後、端々の造作にかかる。その大法は、岩石の配置である**

石組は古来、日本庭園のなかで最も主体的な意味を有していたそうです。
自然石は、その神秘性、不変性、安定性により神格化され、信仰の対象として崇められていました。神が降臨する場として巨石が用いられることもあったようです。
樹木には寿命がありますが、石は不変です。石のおかげで、石組手法があったからこそ、その当時の様子を現在に語り継ぐことができたのですね。

**古式に「九字の石」を立てるという。四縦五横の石を庭に置き、怨霊悪鬼を払うという意味だ。これは、仏説に基づく。(略)古式では石の形状を五つに大別する。長い縦石、短い縦石、枝石、平石、長く曲がった横石**

これらをうまく組み合わせて趣をつくり、その時代にそった宗教観、思想・祈念を表現したのですね。
また、庭石は、山石、川石、海石と分けられており、それらを混在して石組をすることはまずないそうです。
自然の摂理に基き、滝や渓谷は山石で表現し、流れに配する石は川石、大海や磯を表現するのは海石を用いるのが原則のようです。
それにしても、昔の人はどうやってあんな大きな石を運搬していたんでしょうか。
六義園のページでも書きましたが、岩崎彌太郎は無類の石好きで、三菱の海運船で石を運んだと言われています。担いだり、転がしたり、梃子やそりを使って動かしていたようですが、ただ運ぶだけではなく、趣のある位置に配置をし、倒れたり、崩れたりすることなく収めるのですから驚きです。

日本庭園の池は、古い神社の境内にみられるような神池・神島といった、池や島に海神を祀ることをルーツとし、飛鳥、奈良時代のころから海をモチーフに表現されてきました。

日本庭園の池は
・池泉舟遊式
・池泉鑑賞式
・池泉回遊式
の3つに分けられます。

平安時代、移り変わる景色を貴族たちが舟学で詩歌管弦を楽しむ場所が池泉舟遊式庭園だったようで、京都の神泉苑や嵯峨院跡大沢池がそうです。

やがて平安時代後期から鎌倉時代には、池の周りを歩く池泉回遊式や室内から楽しむ池泉鑑賞式に変遷していきます。宇治の平等院や金閣寺が代表格です。

室町後期は部屋から楽しむ池泉鑑賞式が主流になったので、池全体が一つの視野に収まる小さなものになっていきました。
さらに、この時代庭園時代の一大転機、枯山水が出現します。
庭園界にアップルが出現したのですね。山水河原者(作庭者集団)は当時低い身分に置かれていましたが、芸術的感覚に秀でた人の多く集まっていたそうです。
その中にジョブズのような人がいたんでしょうか?

本格的な回遊式庭園は桃山時代の露地(茶室に付属した庭)の出現により広がります。桂離宮はいくつもの露地を組み合わせたような形式といえます。
露地はすべて約束事で構成されていて、なかでも飛び石は規則的な役割をはたします。
客人をまっすぐ茶室まで導くのではなく、あたかも奥山に迷い込んだかのごとく、微妙に移り変わる景色に心を止めるよう配置されて、亭主や作り手の自然観、侘び・寂びの世界に誘導したのです。

その後、江戸時代には広大な大名庭園が江戸を中心に作られていきました。
池泉は治水の役割も果たしていたので、隅田川や神田川、日本橋川から水を引いて川が増水した時、氾濫を防ぐ役割も果たしていました。

日本庭園の勉強をするのに、宇田川辰彦氏著「図解日本庭園の見方、楽しみ方」と本田錦吉郎氏著「図解庭造法」を参考にさせて頂きました。この2冊は本当に分かりやすく、著者の庭園に対する造詣の深さの感じられ読んでいて楽しかったので、参考になさってください。

日本庭園は、作庭師または造園主の理想とする世界を表現し、また神聖な場所として自然の摂理をも受け入れる精神的・思想的な世界観の元に作られているのに対し、西洋庭園はシンメトリーで幾何学的であり、整然とした美しさを表現しているので、それぞれの庭園で感じる事は異なっていて当然と言えば当然ですね。
日本庭園は、まだまだ意匠の意味することがたくさんあるのですが、今はざっと大まかな部分だけ書きました。今後、追記していくつもりでおります。



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